この記事にたどり着いたあなたは
- 防水スマホを買うつもり
- アウトドア趣味でも使えるスマホを探している
- お風呂でもスマホを使いたい
- 海やプールにスマホを持っていきたい
という方ではないでしょうか?
この記事では
- スマホの防水性能は永遠ではない
- 「水没」の意味はメーカーとユーザーで異なる
- 水回りでの使用は自己責任
という結論に向かって、スマホの防水性能について解説します。
水没に対して保証しているメーカーがひとつも無いという時点で結論は出ていますが、
詳しく知りたいという方はこのまま記事を読んでいってください。
※この記事では基本的にiPhoneで話を進めていきますがAndroid端末でもほぼ同じ内容になっています。
iPhoneは防水ではない?
等級 (第一記号) | 保護の内容 | 等級 (第二記号) | 保護の内容 |
0 | 保護なし | 0 | 保護なし |
1 | 直径50mm以上の固形物が内部に侵入しない | 1 | 鉛直に落ちてくる水滴による有害な影響がない |
2 | 直径1.2mm以上の固形物が内部に侵入しない | 2 | 鉛直より15°の範囲から落ちてくる水滴による有害な影響がない |
3 | 直径2.5mm以上の固形物が内部に侵入しない | 3 | 鉛直より60°の範囲から落ちてくる水滴による有害な影響がない |
4 | 直径1.0mm以上の固形物が内部に侵入しない | 4 | いかなる方向からの水の飛沫によっても有害な影響がない |
5 | 有害な影響が発生する程の粉塵が内部に侵入しない | 5 | いかなる方向からの水の直接噴流によっても有害な影響がない |
6 | 粉塵が完全に内部に侵入しない | 6 | いかなる方向からの水の強い直接噴流によっても有害な影響がない |
– | – | 7 | 規定の圧力・時間で水中に没しても水が侵入しない |
– | – | 8 | (製造者に規定される条件に従って)水中に没しても使用ができる |
X | 規定しない | X | 規定しない |
Appleは公式ページで「防水」ではなく「耐水」という表現を使用しています。
「防水」とは文字通り「水の侵入を防ぐ」機能ですが、「耐水」は「特定の条件下であれば水に耐える(防水機能を有する)」という機能です。
つまり、「耐水」は「防水のレベルがどの程度か」を表現していることになります。
この防水レベルについて、スマホではIEC規格のIP保護等級が用いられますが、この数値はあまり重要ではありません。
どれだけ防水レベルが高くても、それは特定の条件下でのみ発揮される性能だからです。
以下のモデルの iPhone は防沫性能、耐水性能、防塵性能を備えています。実験室の管理された条件下でテストを実施済みです。
iPhone 7 以降の防沫・耐水・防塵性能について – Apple サポート (日本)
(中略)
防沫性能、耐水性能、防塵性能は永続的に維持されるものではなく、通常の使用によって耐性が低下する可能性があります。水濡れによる損傷は、保証の対象外となります。
一般的なユーザーは当然「管理された条件下」で使用するわけがないので、耐水試験の条件(深さ 6 m まで、最長 30 分間)を鵜呑みにして「浅いプールなら大丈夫だよね」「ちょっと雨に濡れたぐらいなら平気だよね」と思っていると痛い目を見ます。
YouTuberがスマホをレビューする時に浴槽にぶち込んでるじゃん!
その後普通に使えてるじゃん!
新品だからです。
iPhoneに限らずスマホの耐水性能は「隙間ができる部分を粘着性のパッキンのようなもので埋める」ことによって実現します。(この記事では以降パッキンと呼びます)
新品時は当然粘着力が強く、多少圧力がかかっても剥がれることなく密閉されていますが、パッキンは経年劣化しやすく、熱によって粘着力が落ちていくため、ゲームやアプリの使用によって本体が熱を持ったり、長期の使用によってその耐水性能も落ちていきます。
そうは言ってもお風呂でちょっと触るくらいなら大丈夫っしょ?
運が良ければ壊れません
ジップロックみたいなのに入れとけば大丈夫っしょ?
運が良ければ壊れません
先述の通りパッキンは熱に弱いため、お風呂で使用すると熱によって劣化が加速します。
お湯がスマホにかかると、隙間からパッキンに直に触れ、パッキンが溶けて水が浸入する可能性があります。
また、浴室の温度にもよりますが、スマホ内外の温度差が大きくなると内部で結露し基板がショートする可能性があるため、「ジップロックのような密閉できる袋に入れたら安心!」というわけでもありません。
温度差の他にも「完全に密閉されている」という安心感から水に浸けてしまい、ファスナーが緩んでいたり袋に穴が空いてしまったりで水没するという事態も少なくありません。
メーカーの判断する「水没」はユーザーとは違う
水没というと、端末自体が水に浸かったり沈んでしまった状態をイメージしますが、メーカーが「水没した端末」と判断する状態はユーザーのそれと全く異なります。
スマホの内部には水が浸入したことがわかるような細工がしてあります。
水没判定マークと呼ばれるもので、水に触れることで変色し、これまでにスマホに水が浸入したことがあるかわかるようになっています。
メーカーはここが変色していたら「水没」と判断します。
つまり、たった一滴の水でも浸入してしまえば水没端末と分類されてしまうということです。
もちろん判定マークの変色がなくても本体に水の痕跡があれば「水没」と判断されます。
メーカーの言う「防水」って…?
「防水スマホ」と銘打って販売しているSHARPのAQUOS senseシリーズですが、実際はかなり限定的な条件下での防水性能になります。
本機の防水機能は、常温(5℃~35℃)の真水・水道水にのみ対応しています。以下の例に挙げたような液体をかけたり、浸けたりしないでください(例:温水/石けん・洗剤・入浴剤などの入った水/海水/プールの水/温泉/熱湯など)。また、砂や泥なども付着させないでください。
スペック|AQUOS sense|製品ラインアップ|AQUOS:シャープ
(中略)
お風呂場でお使いいただく際の注意事項
・湯船や温泉、石けん、洗剤、入浴剤の入った水には浸けないでください。
・風呂場では、浴室温度40℃以下、湿度99%以下で連続使用2時間以内の範囲でご使用ください。
・その後必ず水抜き・自然乾燥を行ってください。なお、全ての機能の連続動作を保証するものではありません。
・急激な温度変化は、結露の原因となりますので本体が常温になってから風呂場に持ち込んでください。
・高温のお湯をかけたり、温まった本製品に冷たい水をかけないでください。
(※黄線は筆者による)
海やプールなんてもってのほか!
お風呂でも使えるけど条件を守ってね!
条件を守っても動作保証しないけどね!
SHARPに限らずスマホメーカーはどこも同じような表現をしています。
経年劣化した端末の防水性能がどの程度かはメーカーにも予測できないので、実際にメーカーが防水を保証できる状況はかなり限られています。
しかし多くのユーザーは購入してしばらくしても「この機種は防水だから大丈夫!」と思ってしまっています。
実際は限られた条件下でのみ有効で、かつ経年劣化によって全く機能しなくなるものであることを、水没させるまで知ることはないというのが現状です。
iPhoneを水没させてしまったら?
水に浸かったら「いつ壊れてもおかしくない」という前提で使用しなければいけません。
端末が熱くなる、映像が乱れる、タッチが一部効かないという症状が出ていたらすぐに電源をオフにしてメーカー修理または非正規修理店へ持っていきましょう。
起動しなくなった状態のまま放置しておくと内部の水が基板に触れてショートする可能性が高くなりますが、電源を切っておけば内部の乾燥だけで使用できる可能性があります。
ネット上には「濡れたスマホはジップロックに乾燥剤と一緒に入れて一晩置いておけば乾燥する」というイメージだけで書かれたような記事も存在しますが、それでスマホの内部が完全に乾燥することはほぼありえません。
内部の乾燥は本体を分解しないと水分を除去できないので、必ず修理技術をもったお店に依頼しましょう。
上記症状がみられない場合は様子見になります。
もちろん内部に水が浸入していないか確認の意味でも修理店への持ち込みが推奨ですが、特に異常が見られなければすぐにデータをバックアップしましょう。
繰り返しになりますが、「一度水に濡れたらいつ壊れてもおかしくない」という前提で、壊れたらどうするかを検討しておきましょう。
壊れた時には買い替えるか修理するかになりますが、水没歴がある端末は修理自体が高額になり、仮に修理できたとしても保証がつかないので、修理にあまりメリットはありません。
いずれにしろ新しい端末を手に入れた時にすぐにバックアップから復元できる状態にしておくことが重要です。
どうしても水周りでスマホを使いたい!という場合は保険に入る
近年スマホに対する保険が急速に広がっています。
落下による破損や水没による破損、その他ユーザーの過失による破損でも保険がおりるというものが多く、水周りで使用したいまたは使用しなければならないという人は検討の余地ありです。
保険会社の数は多いですが、月々数百円程度、上限10万円といった内容がスタンダードなプランなので、フラッグシップの高額モデル以外ならいざという時安心でしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「防水」「耐水」と称していかにも水に強いように各スマホメーカーは謳っていますが、実際には限られた条件下でのみ、かつ時限的な性能であることを解説しました。
もちろん普段からあまりスマホを使わなければその分耐水性能の劣化も遅くなりますが、温度の高い環境下にあるだけでも内部のパッキンの劣化は進行していきます。
スマホの耐水性能を過信しすぎず、どうしても水周りで使用したい場合はデータのバックアップをあらかじめ済ませ、
・水没しても諦めがつく端末を使用する
・保険に入っておく
といった対策をしておきましょう。